クリスマスローズは聖夜や愛を連想させるロマンチックな名前の花なので、クリスマスとどのような関係があるのか、クリスマスローズの花言葉にはどのような意味が含まれているのか気になりますよね。
クリスマスローズは名前にバラを意味するローズと付いているものの、一般的にバラと聞いて連想されるフリルのような花びらが何枚も重なった豪華な花姿とは正反対のアネモネに似た形のシンプルな花を咲かせ、花の色も白をはじめ杏色や淡い黄色に薄ピンク、黒に近いような暗い赤など落ち着いていて優しい雰囲気を感じさせるものばかり。
見た目はシンプルながらも一重から八重咲きまであり、単色に限らず花びらと別の色で極細の縁取りがされた糸ピコティと呼ばれる種類や花びらの内側に赤や茶の細かな点が入ったスポットやブロッチと呼ばれる種類もあってそれぞれ違った表情を見せてくれます。
ナチュラル、上品、素朴という言葉がぴったりのクリスマスローズはその見た目を裏切らない心温まる逸話を持っている花でもあります。そこで今回はクリスマスローズの花言葉、意味と役立つ知識についてお伝えします。
クリスマスローズの由来に納得できない理由
クリスマスローズの花名はその名前の通り「クリスマス頃にバラに似た花を咲かせる」ことから付けられましたが、バラの姿を花びらが何重にもなっていて鮮やかな色をしているものと思っている人がクリスマスローズを見ると「この花のどこがバラに似ているの?」と疑問に思ってしまいます。
クリスマスローズはバラ科ではなくアネモネやクレマチスなどが属しているキンポウゲ科の花なので花びらが何重にもなったバラと違う姿なのは当たり前で、更にクリスマスローズが似ていると言われたバラは一重で咲く野バラを指しているため、この事実を知らない人はクリスマスローズの姿と名前の由来が上手く結びつきません。
また、日本ではクリスマスローズの開花期は1月から3月頃なので、由来の開花期であるクリスマスとは違う季節に咲くので再び由来に疑問を抱きますが、クリスマスローズという名前を付けたのは日本よりも早く寒くなるイギリス。クリスマスローズに「イギリスのクリスマスに咲く花」という意味があるように、イギリスでは早咲き品種でなくてもクリスマスローズが咲くのです。
つまり、「クリスマスにバラに似た花を咲かせる花」というのは寒くなるのが早く、バラ栽培が盛んで一重のバラも多く栽培されているイギリス視点での由来で、イギリスとは環境が違う日本では「イギリスのクリスマスに、野バラに似た花を咲かせる花」と補足することで誰もが納得できる由来になります。
クリスマスローズの心温まる話と花言葉
クリスマスローズの花言葉にはクリスマスに直接関わる言葉は無いのですが、クリスマスローズの花言葉の一つである「いたわり」の由来になったと考えられる、キリスト教を主とする国々に伝わるクリスマスローズの逸話があります。
「昔、キリストの生誕を多くの人が様々な贈り物でお祝いをする中、側で見ていた貧しい羊飼いの少女が自分には花の1本すら捧げることが出来ないと涙を零すと、涙が落ちた所から真っ白な美しいクリスマスローズが咲いたので、少女はその花を摘んで、生まれたばかりのキリストに捧げました。」
という優しい逸話で、以来、クリスマスローズは、イギリスやドイツではクリスマスの贈り物に欠かせない花として愛され続けています。「いたわり」の花言葉は優しい見た目のクリスマスローズに良く似合う花言葉として知られています。
「地獄の花」の異名とクリスマスローズの暗い歴史
クリスマスローズの花言葉の中には「中傷」や「スキャンダル」なんて素朴な見た目に反した物騒な言葉が付けられていますが、その背景にはクリスマスローズが持つ毒と歴史が関係しています。
クリスマスローズの根にはクリスマスローズの学名であるヘレボルスの由来になっている「ヘレブリン」という強心作用がある成分があり、中世ヨーロッパでは狩猟の道具に塗って動物を狩ったり、戦争の道具として利用したり。
また、玄関周りに植えて悪霊除けや悪魔祓いに使ったりと「殺す」を意味する「helein」と 食べ物を意味する「bore」を合わせた「helleborus=殺す食べ物」という名前らしい役目を持っていました。
「helein」 には「地獄」という意味もあるので「地獄の花」と呼ばれることもあったそうです。クリスマスローズの持つ性質と歴史が花言葉になったため、お祝いの花でありながらもクリスマスローズは花言葉にネガティブな意味を持つことになりました。
咲く花の少ない冬でも育てやすく、見た目も可愛らしい花ですが、クリスマスローズの茎や葉の汁が肌に付くとかぶれたり水ぶくれを起こすので、注意せず花に触れたり誤飲してしまう危険がある小さな子どもや動物と同居している家庭では扱いに注意して下さい。
毒にも薬にもなったクリスマスローズと日本の関係
クリスマスローズが「殺す食べ物」とされていた一方、毒薬変じて薬となるなんてことわざもあるように、クリスマスローズの根にある毒は精神安定剤にもなることから精神を病んだ人の治療に使われていました。
日本でも明治時代に輸入され薬用植物として利用されていたこともあり「私の不安を和らげて」や「慰め」といったクリスマスローズの花言葉の由来になっています。この2つの花言葉は優しい色の多いクリスマスローズに合った花言葉ですが、クリスマス以外のシーンで贈る時は「中傷」や「スキャンダル」のネガティブな花言葉で誤解されないように注意して下さい。
さておき、医療が発展してからはクリスマスローズは観賞用、場合によっては毒草とされるようになり、薬草として使われることはなくなりましたが、その優しい色味と控えめで美しい花姿から「冬の貴婦人」と呼ばれたり「初雪起こし」「寒芍薬」の名で茶花として愛されていたそうです。
他にも葉の姿を表した「八手花笠」や開花季節に因んだ「節分草」の名もあり、付けられた名前の多さから日本の文化にも良く馴染んでいることがわかりますよね。寂しさも感じさせる冷たく静かな季節にクリスマスローズの花が、花言葉通り茶席で人の心の「慰め」になっていたと言えます。
クリスマスローズとされる種類はヨーロッパと日本で違う
イギリスでクリスマスローズと名づけられたのはヘレボルス・ニゲルという真っ白な花を咲かせる種類で、ヨーロッパではニゲルの花のみがクリスマスローズと呼ばれています。
しかし、日本ではヘレボレス属をまとめてクリスマスローズと呼んでいるので、ヘレボルス・ニゲルも、花色が豊富でニゲルより少し大きな花を咲かせるヘレボルス・オリエンタリスも同じクリスマスローズとして扱われます。特にヘレボルス・オリエンタリスはレンデンローズとも呼ばれますが日本では華やかな種類のクリスマスローズとして人気があります。
この違いから、昔、とある日本人がイギリスに赴きオリエンタリスのことを指して「クリスマスローズを見たい」と伝えると案内された先に見たかったオリエンタリスの花はなく、ニゲルの花だけが咲いていたなんて話もありますから、本場でクリスマスローズを見たい時は品種名を伝えるようにしましょう。
以上、クリスマスローズの花言葉についてお伝えしましたが、クリスマスローズの花言葉は過去に毒にも薬にもなったクリスマスローズの性質と同じく、良い意味の言葉も悪い意味の言葉も存在します。
ヨーロッパではクリスマスのお祝いや贈り物にされる花ではありますが、日本ではポインセチアやシクラメンなどに比べまだまだ認知度の低い花ですからネガティブな花言葉や毒を持つクリスマスローズを贈る時はきちんと意図を説明することがトラブルを避けるためには重要です。
それでもクリスマスローズの花言葉には優しい気持ちにさせてくれる言葉や人の情を感じる話もありますから、悪い部分ばかり気にせず実際にクリスマスローズを育てたり、ヨーロッパのようにクリスマスになったら早咲きのクリスマスローズに良い花言葉を添えて親しい人に贈って、素直にクリスマスローズの美しさと花言葉を楽しんでみてはいかがでしょうか。
まとめ
クリスマスローズの花言葉と役立つ知識とは
・「いたわり」の花言葉の由来はヨーロッパに伝わる羊飼いの少女の逸話
・「地獄の花」と呼ばれる程の毒性が「中傷」や「スキャンダル」の花言葉になった
・「私の不安を和らげて」「慰め」はクリスマスローズの薬効から付けられた花言葉
・クリスマスローズは日本の茶花として日本の文化にも馴染んでいた
・ヨーロッパではヘレボルス・ニゲルだけがクリスマスローズと呼ばれる