紫苑の花言葉は「追憶」や「君を忘れない」「思い出」など、もう会えないような遠くの人に想いを馳せる言葉ばかり付けられていて、どうして過去を思う言葉ばかりが付けられたのか気になりますよね。
遠くの人を想う花言葉ばかり付けられた理由には紫苑の別名の中の「鬼の醜草」や「思い草」という名前の由来でもある平安時代の物語が関わっていて、この物語を知っているか知らないかで紫苑の花言葉に対する印象が違います。
花言葉の由来を知るだけで花言葉の印象が変わることがあるなんて余りないことですから興味をそそられますが、紫苑の花の興味深い話は日本の花言葉に関することだけではありません。そこで今回は紫苑の花言葉、意味と役立つ豆知識についてお伝えします。
紫苑の名前の由来とは
紫苑は英語では種名であるシオンを意味する「tataricus」とギリシャ語で「星」を意味する「aster」を合わせTatarian asterと表記しますが、紫苑のルーツは西洋ではなく、中国から「紫苑(ジワン)」と言う名の薬草として日本に渡来した花であるため読み方が転じた「紫苑(シオン)」という名で呼ぶのが一般的。
中国では薬草として扱われていた紫苑ですが、日本では当時高貴な色とされていた紫色の花を咲かせることから観賞用の花として広まり、平安時代には色の名前にもなっています。
紫苑の花が由来となった「紫苑色」はその名の通り紫苑の花びらの色を由来とする薄紫の色で、紫が高貴の色とされていた平安時代に召使の童女から位の高い人まで身分を問わず秋の衣装に使われる色として愛されていました。この紫苑色は源氏物語や枕草子などの王朝文学の中にも書かれていて、平安の頃には既に紫苑の花とその色が広く知られていたことがわかります。
紫苑の花言葉とその由来の物語
紫苑の花言葉には「追憶」「思い出」「君を忘れない」「遠方にある人を思う」の4つが良く知られていて、過去や遠い人を想う言葉ばかりが付けられているのは今昔物語集と呼ばれる平安時代の説話集の中の物語に因んでいるからです。
紫苑の花言葉の由来となったのは母親を亡くしたある兄弟の物語で「母を亡くした兄弟は毎日墓参りをしていたのですが、仕事が忙しくなった兄はいつからか「忘れ草」と呼ばれる「萱草(かんぞう)」を供え、次第に墓参りをしなくなりました。
一方、弟は母への思いを忘れまいと雨の日も欠かさず紫苑の花を持って墓参りに訪れていました。その様子を毎日見ていた墓守の鬼は弟の母への気持ちに感心し、弟に予知能力を授け、その後弟は幸せに暮らしました。」という内容であり、この物語は別名である「鬼の醜草(しこぐさ)」や「思い草」「忘れぬ草」の由来にもなっています。
物語を知らないと切なく感じる紫苑の花言葉も物語を知った後は優しさや強い意志も込められた花言葉に変わりますよね。また、紫苑には「鬼の醜草」や「思い草」の他にも紫苑の開花期が中秋の名月の時期であることに由来する「十五夜草」の別名もあり、昔の人が美しい月とともに紫苑の花の姿も楽しんでいたことが想像できます。
思い草の由来にもう1つの説がある
古来、中国では紫苑に死者を蘇らせてくれる草花を指す「返魂草(ハンゴンソウ)」の別名が付けられていて、紫苑の別名である「思い草」は返魂草に由来するのではないかという説もあります。
同じように「返魂草」の名前で呼ばれていた花には桔梗やオミナエシなど幾つか種類がありますが、桔梗・オミナエシは紫苑と同様に「思い草」の別名を持ち、薬効の高い草であるといった共通点があり、確かな理由はわかりませんが、返魂草と思い草の繋がりには意味があったのかもしれません。
因みに、ハンゴンソウという漢字が「反魂草」とされている場合がありますが、返魂草と反魂草の意味に変わりはなく、中国では返魂草の表記が一般的ですが、日本では読みやすい反魂草が使われることも多いです。
また、「反魂草」という名が別名や異称ではなく、花名として付けられているキク科キオン属の花があり、この反魂草が属するキオン属のキオンという名前は紫苑の花に似た黄色い花という意味で付けられたとも言われていて、漢字で黄苑と書きます。
紫苑の西洋の花言葉とは
今でも中国や朝鮮、日本、シベリアと限られた場所にしか自生していない紫苑の花言葉に西洋で付けられた花言葉はありませんが、アスターの仲間であるため、アスター全般の西洋の花言葉である「daintiness=優美・繊細」「patience=忍耐」「symbol of love=愛の象徴」の3つの言葉を当てはめることができます。
物語とは繋がりのない花言葉
紫苑の花言葉は、母を亡くした兄弟の物語を由来とする花言葉が一般的に知られていますが、その他に「ごきげんよう」や「どこまでも清く」「喜びを下さい」という花言葉もあります。この3つの花言葉にはっきりとした由来はないので、お伝えした紫苑の豆知識を踏まえて想像を広げてみてはいかがでしょうか。
豆知識として、「ごきげんよう」と「どこまでも清く」の2つの花言葉に関しては紫苑の花色別の花言葉とされていて、紫苑は薄紫から紫の花色がポピュラーですが、白の紫苑も存在し、紫の紫苑には「ごきげんよう」、白い紫苑は「どこまでも清く」と色別に花言葉が付けられているとも言われています。
さて、紫苑の花は絶滅が危惧されているため流通量が少なく、そのためか紫苑の花を知る人も少ないですが、平安時代では物語の題材に使われたり、その名の付く色を好んで身に着けるほど愛されていた花です。
忘れぬ草である紫苑が忘れられてしまうのは寂しいですから、紫苑の花言葉の由来となった今昔物語を読んでみたり、紫苑色がどのような色か見てみたり、紫苑の花言葉や豆知識を覚え、できれば誰かに広めてみましょう。
紫苑の花をホームセンターや通信販売では手に入れることが難しいですが、稀に紫苑の苗が売られていることがあります。栽培自体は簡単で丈夫な花なので、もし縁があって紫苑の苗と出会った時はぜひお家の花壇に迎えてあげてみてはいかがでしょうか。。
まとめ
紫苑の花言葉と役立つ豆知識とは
・紫苑という名は中国で付けられた名前で、花の色が色の名前にもなった。
・「追憶」「思い出」「君を忘れない」「遠方にある人を想う」の4つは今昔物語が由来の花言葉
・紫苑の西洋の花言葉は 「daintiness=優美・繊細」「patience=忍耐」「symbol of love=愛の象徴」
・紫の紫苑には「ごきげんよう」白の紫苑には「どこまでも清く」という色別の花言葉がある
・花言葉の「ごきげんよう」「どこまでも清く」「喜びを下さい」の3つにははっきりとした由来はない