椿は古くから日本人に愛されてきた花のひとつですよね。江戸時代から品種改良がなされ、日本産品は現在2,200種以上を数えます。また、18世紀に欧米に渡ると「西洋椿」と呼ばれる、豪華で華やかな花をつける品種が多く作られました。そのため、ひとえに椿と言っても、花の姿は様々で、その分花言葉もたくさんあるのです。
そこで今日は、椿の基本の色でもある、赤と白のそれぞれの花言葉にスポットを当てながら、そこに浮かび上がる女性像についてお伝えします。ではご覧ください。
日本の椿と西洋の椿では、イメージが違います
細かく花言葉の説明をする前に、日本と西洋の椿のイメージの差をお話しておきましょう。椿は日本原産で、学名は「Camellia japonica(カメリア・ジャポニカ)」。英語名も学名と同じです。品種改良の結果、椿にはいろいろな花の大きさ、そしていろいろな咲き方をするものが出来ました。
日本では小~中輪の一重咲き…私たちが通常「椿」と聞いて思い浮かべる、あの花の形が好まれますが、西洋においては大~極大の八重咲きの豪華な形が好まれています。日本においても西洋においても、椿の持つ「冬でも常緑・日蔭でも花をつける」性質が好まれているのに、花の姿の好みが全く違うというのは、面白いことですね。
また、日本においては花だけでなく、葉や枝も鑑賞の対象となっています。そもそも「ツバキ」という名は葉の様子を表す「厚葉木(アツバキ)」や「艶葉木(ツヤバキ)」からとられた、というのも、葉が珍重されていたからでしょう。
椿全般の花言葉にも、微妙な違いがあります
それでは、まず椿全般の花言葉を見て行きましょう。
日本においては「控えめな美しさ」「控えめなやさしさ」「誇り」「女性らしさ」「美徳」、そして「私は常にあなたを愛します」などが挙げられます。
「女性らしさ」という花言葉が出てきますが、いかにも大和撫子というような、慎ましやかな女性像が浮かんできます。「控えめ」というフレーズは、椿の花に香りがほとんどないことにちなんでいるようです。
西洋の花言葉になると、少しイメージが変わります。「敬愛」「感嘆」「完全」「完璧」などの花言葉が挙げられます。西洋の椿は日本と違い、華やかなものが好まれることを重ねて考えると、もう少しアクティブで強い女性が思い浮かんできませんか?
赤い椿の花言葉→心のままの美しさを表す言葉が多い
赤い椿の花言葉には、以下のようなものがあります。
「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」「気取らない魅力」「見栄を張らない」「慎み深い」「高潔な理性」「謙虚な美徳」
どれも、決して背伸びをしていない、心のままの美しさを表した言葉となっています。
面白いのは西洋独自の花言葉。「あなたは私の胸の中で、炎のように輝く」「吾が運命は君の掌中にあり」赤からイメージされる、情熱にあふれた花言葉です。
白い椿の花言葉→「完全」に関連した言葉が多い
白い椿の花言葉には、赤い椿とはまた違った味わいがあります。
「最高の愛らしさ」「申し分のない魅力」「至上の美」「理想的な愛情」「冷やかな美しさ」「素晴らしい魅力」「誇り」
どれもが「完全」あるいは「理想」に関連した花言葉となっているのが印象的です。西洋独自の花言葉では、「愛慕」「崇拝」といったものがあります。
「椿姫」マルグリットと椿のお話
1848年、アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)によって小説「椿姫」が著されました。この小説は戯曲やオペラの原作ともなったので、ご存知の方もいらっしゃることでしょう。
ヒロインのマルグリット(オペラでの名前はヴィオレッタ)は高級娼婦。ひと月のうち、25日間は白い椿、5日間(月経期間)は赤い椿を身につけていたため「椿姫」と呼ばれていました。物語には、彼女が真実の愛に目覚めながらも、娼婦であることが災いし、悲劇的な道を辿っていく様が描かれています。
マルグリットは常に誇り高く生きていました。まさに白い椿の花言葉である「誇り」や「申し分のない魅力」「冷やかな美しさ」という女性像に近かったのではないかと思います。しかし、赤い椿を身につける時にはメッセージ的なものもあったのでしょうが、「本来の自分に戻って」いたのかもしれませんね。
彼女の幸せな時間は短かったけれど、愛する人の前ではきっと「赤い椿」の女性像だったのではないかと思います。
ココ・シャネルの愛した椿
20世紀を代表するファッション・デザイナーにして、シャネルの創業者であるココ・シャネル(1883-1971)は、椿をこよなく愛していました。それは今も、八重咲きの椿をモチーフにした「カメリアコレクション」として受け継がれています。
シャネルは何色の椿が好きだったのか考えますと、白・黒・ベージュを特に好んでいたと言う事から、おそらく白い椿だったのではないかと思います。確かに、デザインした服装のシンプルな美しさを考えると、白い椿の女性像の方がしっくりくる気がします。
また「カメリアコレクション」においてデザインされている椿に近い花の形に「乙女椿」という種があります。この椿の花言葉は「控えめ」。これまでのヨーロッパの女性たちが着用していた、コルセットや装飾過多な服をやめ、機能的かつ女性の身体に沿った服を編み出したシャネルの美意識に、不思議と合っています。
その他の花の色の花言葉は、赤か白、必ずどちらかと共通する
最後に、その他の花の色の違いによる、椿の花言葉を見ていきましょう。
ピンクの椿は、「控えめな愛」「控えめな美」「慎み深い」など。西洋では「恋しく思う」という独自の花言葉もあります。また黄色い椿「キンカチャ」の花言葉は「理想の愛」「謙遜」「控えめな愛」。黒い椿(黒味を帯びた赤)の花言葉は「気取らない優美さ」です。
つまり、赤か白、どちらかの花言葉と共通することが多いのです。椿における「赤と白」は、やはり象徴的なものなのかもしれません。
さて、赤い椿と白い椿では、そこに思い浮かぶ女性像も少し違ったものになりますが、共通するのは高潔な姿勢であることでしょう。椿のもうひとつの呼び方は「耐冬花(タイトウカ)」。寒い冬を耐え、美しい花を咲かせる椿が目に浮かびます。
その姿は私たち女性に対し、ひとつのお手本を示してくれているのかもしれません。椿は春になっても咲き、比較的長い期間を楽しめる花です。様々な椿に触れ、それぞれの女性像を思い浮かべるのも楽しいかもしれませんね。
まとめ
椿の花言葉は色によって違う☆赤と白に秘められた女性像
・日本の椿と西洋の椿では、イメージが違います
・椿全般の花言葉にも、微妙な違いがあります
・赤い椿の花言葉→心のままの美しさを表す言葉が多い
・白い椿の花言葉→「完全」に関連した言葉が多い
・「椿姫」マルグリットと椿のお話
・ココ・シャネルの愛した椿
・その他の花の色の花言葉は、赤か白、必ずどちらかと共通する