春になると、漂ってくる花の香りに近づいてその花を確かめたくなりますよね。上品な甘い香りの主、それはきっと木蓮です。木蓮の花言葉は「威厳」「崇高」「高潔な心」「持続性」「忍耐」「自然への愛」などといった、どこか荘厳なイメージが感じられます。
木蓮の木は庭木にしては高木のため間近では花をよく見られませんが、お寺や日本庭園などでも、上を向いてわずかに開いている木蓮の花を見ることができます。木蓮には紫色の紫木蓮(シモクレン)と、その仲間の白木蓮(ハクモクレン)があり、園芸的には木蓮というと紫木蓮を指し、白色を白木蓮としています。
原産地の中国では古くから高貴な花と尊ばれ、宮中や寺院に植えられてきました。日本ではハクモクレンが咲いて散る頃にソメイヨシノが咲き、ソメイヨシノが満開になる頃、シモクレンが咲き始めます。
古くからある花だけに、木蓮はその花言葉にも生きるためのヒントを与えてくれるような深みを持っています。そこで今回は木蓮の花言葉を知って前向きに生きるコツについてお伝えします。
木蓮の花言葉を知って
前向きに生きる5つのコツ
自然風景の中の木蓮の存在感
満開になった木蓮の花は、長く立ち止まりたくなるような威厳のある姿をしています。それはまさに木蓮の花言葉「威厳」そのものです。特に白木蓮は10m以上になることも珍しくないので、枝に真っ白なふっくらした小鳥が何十羽も止まっているかのような錯覚を覚えます。
紫色の木蓮もまた、小さめの花が多い春の花の中では目立つ赤紫色の花が一斉に咲いている姿は遠くからでも人目を引きます。黄緑の新芽の色もまたアクセントになりまぶしく、咲き方も一輪一輪違います。
日がよく当たる南側から先に成長することでつぼみの先端が北を向く「コンパスフラワー」でもある木蓮は、旅人の方角を知るための花でもありました。木蓮は生け花にも用いられますが、枝ぶりの扱いには一苦労なのだとか。こんなところにも木蓮の花言葉「威厳」が感じられます。本当の大物は押しつけではない威厳のある人です。
闘う女性から学ぶ「崇高」な意思
大河ドラマでも知られる女性の戦国武将。中国にも闘う女性を題材にした故事が「花木蘭(ファ・ムーラン)」という名で知られています。この主人公の名前ムーランは、木蓮の意味です。
木蓮の花言葉「崇高」「高潔な心」で使命感に燃えたムーランは、病弱な父の代わりに男装して軍に志願します。異民族を相手に各地を転戦し、見事に自軍を勝利に導いて帰郷した後に美しい孝行娘にもどった・・・という壮大なストーリーになっています。
このムーランの物語は京劇や小説にアレンジされ、1998年にはディズニーでアニメ化もされました。ちなみに漢語では「木蘭」の字を使っていますが、これは花が蘭に似ているということです。
女性の名前としても通用する蘭のあでやかさを重要視してなのか、木蓮の出てくる書物などでは大部分が「木蘭」となっています。平凡に見えても毎日を送ることはある意味で戦いです。自分のしていることに誇りを持つ、時には木蓮の花言葉「崇高」を思い出してみることも大切です。
ヒット曲に見る木蓮の花言葉
1993年のJ-POPの大ヒット曲の一つにスターダスト☆レビューの「木蘭の涙」があります。大陸を思わせる曲調と、大切な人が亡くなってしまった、木蓮のつぼみが開くたびにそのことを思い出して涙するという歌詞のこの曲は、20年以上経っても繰り返しカバーされている息の長い曲です。
最初、作詞家は亡くなった恋人を偲ぶのは男性の設定で歌詞を書いたそうですが、世の中に出たら女性が男性を偲ぶ歌だと受け止められていったことに驚いたそうで、そこから「木蘭の涙」は聴く人の解釈によって多様な解釈がされ、東日本大震災をはじめとする自然災害で命を落としてしまった人々のための曲としても広がっていきました。
スターダスト☆レビューは1981年のデビュー以来、スタンダードを残すことを目指して曲作りを心がけているという話で、それが「木蘭の涙」の世代や性別を越えたヒットにつながっています。それはまさに、木蓮の花言葉「持続性」そのものです。
忍耐強く春を待ち静かに去っていく木蓮
木蓮は開花してから3~4日の短い命を終えますが、散る姿も、気が付いたら散っていたという控えめさです。遠目のあまり花の姿がよくわからなかった木蓮ですが、散った後に見る花びらの厚さとその白さ、絶妙な色合いの赤紫を見つけると、咲いている木蓮の盛りの姿をもっとよく見たかったと思わされます。
そしてこの次は木蓮の花の咲く頃に花をよく見てみようという気持ちになるのではないでしょうか。長く勤めた職場を去った、子供が無事に自分の元を巣立っていったなど、それまでいろいろなことに耐えて頑張ってきた自分を、木蓮の花言葉「忍耐」と重ねて褒めてあげたいものです。そしてお世話になった人や関わって別れていった人にも、良い思い出が残っているといいですね。
恐竜時代に花を咲かせていた木蓮
木蓮の花言葉はここまでお伝えしたようにどれも襟を正したくなるようなものばかりですが、その中で「自然への愛」という花言葉は少し趣が違います。花の咲く植物の起源はわからないものが多い中で、木蓮は果実や花の化石から恐竜の生きていた白亜紀(1億2500万年前)から存在していたことがわかっています。
その中で木蓮が大きく注目されたのが、2009年に福井県立恐竜博物館で開かれた「恐竜は花を見たか?」という展示でした。福井県で発掘された恐竜フクイサウルスのバックにハクモクレンがイラストで描かれていたのです。
これは厳密には今の庭木の木蓮とは違う同じ科の植物ですが、動物が被子植物(種子が完全に包まれた植物)を食べるようになったことで何らかの変化があったかもしれないと研究も盛んです。
2015年には中国でさらに古い1億6200万年前のジュラ紀の花の化石も見つかりましたが、この花も木蓮の仲間だということが証明されました。このように「自然への愛」という木蓮の花言葉は、木蓮が生物の進化を見届けてきた証拠であるといえます。環境は全く変わったのに木蓮は命を繋いできました。それを思う時、人間の悩みや苦しみも一瞬であることが感じられるはずです。
いかがでしたでしょうか。決して派手ではないのに存在感のある木蓮の花言葉は、時代が変わっても私たちが根本で失ってはいけない高い志のようなものを感じさせてくれるものばかりです。
春が待ち遠しい頃、私たちは木蓮と同じように香りの良い梅や沈丁花の木に近づいて、花の姿を見つめ、顔を近づけて香りをかぐことができます。そうやって春の訪れを感じると共に、私たちの関心は桜がいつ咲くか、に移っていきます。
桜の前後に咲く木蓮の花に注目する人はそれほど多くないでしょう。背の高い木蓮はそこまで親しみやすくないからです。でも木蓮にとってはきっと、そんなことは大したことではないのです。
大したことではない、と思えることはつらい時や苦しい時とても助けになります。たまらなく息苦しくなったら木蓮の花と花言葉を思い出してみて下さい。そして次の春には木蓮の木を見上げて深呼吸したら、きっと新しいあなたに生まれ変わっているはずです。
まとめ
生き方のヒントをくれる木蓮の花言葉
・つぼみが北を向く規律正しい姿の木蓮に、「威厳」を持って意志を貫く
・毎日が戦い、の中でも最初に抱いたのは「崇高」な目的意識
・「持続性」を持ってスタンダードを後世に残す心がけ
・「忍耐」には誰よりも自分が賞賛を
・恐竜と共存していた木蓮に「自然への愛」と人間の小ささを知る