夏の花と言えば皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
明るい黄色が眩しいひまわり、ハスに似た花を水面上に咲かせるスイレン、独特な形をしたカンナなど、夏の花はとても個性豊か。春の可愛らしくやわらかな雰囲気も素敵ですが、夏の花はとにかく鮮やかで元気なのが印象的です。
それはまるで太陽の強い日差しと自然とが調和しているかのよう。
厳しい暑さの中でも明るく元気に咲いているその姿を見ていると、こちらも頑張ろうという元気をもらうことができますよね。どの季節を通じても花には不思議な力があります。
見ても香っても心を癒し、時には飲食で人を癒してくれます。夏の花もまた癒しのパワーが詰まったものばかりで、更には少し変わった効能・効果がある花もあります。
日本の伝統的な花から、一般的でも名前はあまり知られていない花、可愛らしい花から立派な花まで、是非皆さんに知ってもらいたい花を厳選しました。
特に夏の気分を盛り上げてくれそうな赤・ピンク・紫の花を咲かせる夏の花を、夏の花図鑑10選としてご紹介します。
【夏の花図鑑】
赤・ピンク・紫の夏に咲くお花、10選☆
伝統の夏を彩る朝顔(アサガオ)
日本の夏に欠かせない花と言えばやはりアサガオではないでしょうか。
日没から約10時間後に開花を始め、その名の通り朝に可愛らしい姿を見せてくれるお花です。赤・ピンク・紫の他にも様々な色で私たちを楽しませてくれます。
浴衣の模様として用いられたり、日本の伝統的な夏に深く関わりのあるアサガオ。
ツルを伸ばして成長することから日よけとして利用されていたこともあり、古くから愛されるお花になりました。一説によると、アサガオと日本の繋がりの始まりは奈良時代末期から。日本が唐に派遣した使節の遣唐使(けんとうし)がアサガオの種子を薬として持ち帰ったことが初めととされています。
なんとアサガオの種の芽になる部分には下剤作用のある成分が沢山。
奈良時代、平安時代には薬用植物として扱われていたこともあり、漢名では「牽牛子(けんごし)」と呼ばれています。ただし、種子には嘔吐や下痢、血圧低下を引き起こす強い毒もあるため、素人判断で服用することは決してお止めください。
暑い夏の朝に涼しげに咲くアサガオ。日本の夏を盛り上げてくれるお花です。
滑らかな肌触りと美しい花、百日紅(サルスベリ)
百日紅と書いてサルスベリと読む、なんとも変わった名前のお花です。
樹皮が滑らかでツルツルとしているのが特徴的で「木登りの上手な猿も滑り落ちてしまう」ということから名付けられました。
また、百日紅と書いて(ヒャクジツコウ)との別名もあり、花が100日以上の長期間、咲き続けることが由来となっています。夏の長い間、赤い花を咲かせるサルスベリは神社やお寺で見かけることが多く、ちりめんのように縮れたヒラヒラとしたフリルのような姿が愛らしさを感じさせます。
サルスベリの品種は約30種類あり、赤・ピンク・紫の他にも豊富な色を咲かせ、見る人を楽しませてくれます。名前の由来にもなっているツルツルした木肌は、木の成長とともに薄い樹皮がいっせいに剥げ落ち、新しい樹皮に代わることからおこります。
更には、ツル植物が巻き付くのを防ぐために表面がツルツルになったとの説も。猿が滑るほどの滑らかさではあるものの、実際の猿は容易に木登りをしてしまいます。
花の美しさに加え病気にも強く、大きくなり過ぎないことから神社やお寺の他にも、公園や庭などで幅広く楽しまれています。木肌の滑らかさに触れると同時に花の愛らしさを感じてみてはいかがでしょうか。
異国の地を思わせる亜米利加梯梧(アメリカデイゴ)
名前にアメリカと付くだけあり、南アメリカが原産のお花です。
アルゼンチンやウルグアイの国花であり、日本には江戸時代に到来し、鹿児島県の県木にもなっています。海外からやってきた赤い豆の意味をもつ海紅豆(カイコウズ)と言う別名もありますが、あまり使われておらず、本来は別の植物の名前であると言った説も。
6月から9月にかけて鮮やかな赤い花を咲かせ、8月から9月になると茶褐色の実を付けます。その鮮やかさは学名に「Erythrina crista‐galli」、Erythrina(赤色) crista‐galli(鶏のとさか)と付けられるほど。
メキシコではサラダや煮物などに食用として親しまれています。
デイゴと言えば沖縄の県花として有名ですが、デイゴの仲間は世界でおよそ50種類あります。アメリカデイゴもそのデイゴの仲間の一種で、南国を思わせる花を咲かせるのが特徴的。寒さに弱く、暖かい地方の街路樹や公園などに多くみられます。
アメリカデイゴは成長がとても早く、高さは約6メートルまでに及ぶため、一般家庭では適度な剪定が必要。エキゾチックな姿がどことなく異国の地を感じさせるお花です。
毎日元気な日日草(ニチニチソウ)
こちらも夏に咲く花の定番として知られているお花です。
ニチニチソウの名前は、初夏から晩秋にかけて毎日花を咲かせることから名付けられました。花の命は2~3日と短いものですが、株いっぱいに次から次へと花を咲かせてくれるのが特徴的。
赤・赤紫・ピンク・薄ピンク・白の花を咲かせ、栽培がしやすいため園芸初心者でも挑戦しやすく親しみやすいお花です。
公園や庭、道路脇の花壇などでよく見かけるとても一般的な花ですが、意外にもニチニチソウには抗癌薬の原料となる成分が含まれていますただ、こちらも素人判断で服用するのはあまりにも危険な毒性があります。
一時は医療現場でも使用されていましたが、その強い毒性から激しい副作用を引き起こしてしまうため現在は使用されることもなくなりました。用量や用法を誤ると嘔吐や全身麻痺を起し、場合によっては命の危険もあります。
健康法として試した結果、事故に繋がってしまった例もありますので、興味本位での飲用はお止めください。夏の間、毎日見せてくれる元気な姿に癒されて、心も体も元気に過ごしましょう。
可愛らしいお喋りさん、金魚草(キンギョソウ)
名前の通り、金魚のような花を咲かせるキンギョソウ。
金魚のおちょぼ口に似ている、またはひれを広げて泳いでいる金魚のように見えることからその名がつきました。春から初夏にかけて赤・ピンク・紫の他にも白や黄色などの花を咲かせます。金魚の養殖で有名な愛知県弥富市の市の花になっています。
日本と中国では金魚に見立てた金魚草との名前がありますが、英語ではミツバチが蜜を吸うために花の中に入っていく様子がまるで竜にパクッと噛み付かれているように見えることから「snap-dragon(噛み付く 竜)」と呼ばれています。
学名の「Antirrhinum」はギリシャ語で「鼻のような」の意味を持ち、こちらも花の形から名付けられました。更にフランス語の「gueule-de-loup」もまた花の形から連想された名前で「オオカミの口」の意味があります。
同じ花でも国や見る人が違うと多様な見方があって面白いですよね。キンギョソウの花言葉には「おしゃべり」や「でしゃばり」といったものがありますが、この花言葉も花の形が口を開いているような様子からつけられたもの。
ちなみに日本ではキンギョソウの甘い香りは緊張を解きほぐしてリラックスする効果があるとされていますが、ドイツではその強い香りで悪魔を追い払うという言い伝えもあります。
見た目も可愛く、リラックス効果のあるキンギョソウは初夏にピッタリ。
丈夫で美しい、松葉牡丹(マツバボタン)
6月から9月にかけて赤・ピンクの花を咲かせます。
サボテン並みの保水力と夜に気孔を開くという特殊な光合成をするため、高温と乾燥にとても強いお花です。ほとんど世話がいらないほどに丈夫でありながら美しい花を咲かせることから多くの人に栽培されています。昼に花を咲かせ、夜になると閉じるマツバボタン。
その様子がまるで門を思わせることから学名に「Portulaca grandiflora」とつけられたという説があります。Portulaca(ポルチュラーカ)はラテン語で「門」を意味するポルチュラに由来。マツバボタンの和名は、葉が松葉、花が牡丹に似ていることからつけられました。
その他にも、炎天下でもよく花を咲かせることから「日照草(ヒデリグサ)」、茎を切って土に挿しておくだけで簡単に根が出て増えることから「爪切り草(ツメキリソウ)」、「摘み切り草(ツミキリソウ)」の別名もあります。
花の命は一日と短いものの、夏の間は次から次へと花を咲かせます。「無邪気」という花言葉に相応しい、見ているだけで元気をもらえる可愛らしいお花です。
小さくても個性的なフウロソウ
初夏に最盛期を迎えるフウロソウ。
フウロソウ科フウロソウ属の学名は「Geranium」、ラテン語読みでゲラニウム属と言います。もともとはゼラニウムと同じ属でしたが、ゼラニウムはテンジクアオイ属へと移りました。しかし、その頃の名残で現在もゼラニウムとして流通しています。
ゼラニウムと同じようで同じではない、少しややこしいお花です。更に一言でフウロソウと言っても、フウロソウと呼ばれる花には沢山の種類があります。
赤紫の花を咲かせるアケボノフウロ、姫フウロ(マネスカウイ)。ピンクの花を咲かせるエンドレッシー、ワーグラーベピンク。その他にも豊富な色と種類を咲かせますが、そのどれもがとても可愛らしいものばかり。
フウロソウは一日草のため夕方には花を散らしますが、毎日沢山の花を咲かせてくれるのが魅力です。小さいながらも様々な表情を見せてくれる、素敵なお花です。
癒しの花、ラベンダー
香りよるリラクゼーションの効果でも広く知られているラベンダー。
学名の「LAVO」はラテン語で洗うという意味を持ちます。ローマ時代、入浴の際に入浴剤や香水として使われていたことからその名前がつきました。身体のリズムを整え、精神を和らげてくれる、心身を浄化してくれる効果のあるラベンダーは正に「洗う」の名に相応しいお花と言えます。
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ラックス効果だけでなく、一面に咲き誇る姿もまた実に見事。ラベンダーは品種によって見頃が異なり、早咲きは6月下旬から開花が始まりますが遅咲きは8月上旬まで楽しむことができます。
栽培されているラベンダーの種類は主にイングリッシュラベンダー、フレンチラベンダー、フリンジドラバンダー、ウーリーラベンダーなどがあります。
最も一般的なラベンダーはイングリッシュラベンダーのことを指します。コモンラベンダーや真正ラベンダーとも言われ、観賞や精油採取に利用されています。イングリッシュラベンダーはラベンダーの代表的な種と言えます。
眺めていても香りを嗅いでも癒しを与えてくれる、清々しいお花です。
情熱の国から来たサルビア・スプレンデンス
夏から秋にかけて赤い花を咲かせるサルビア・スプレンデンス。
「サルビア」は広い意味では「シソ科サルビア属」の全ての植物を指します。ハーブとして知られるセージも薬用サルビアとして仲間に入り、総数にすると500種以上と言われています。
園芸での「サルビア」はサルビア・スプレンデンスのことを指し、夏や秋によく見られるサルビアはほとんどがこの種のものになります。サルビアの名前はラテン語で「サルベオ(治療する)」とから由来します。
この種の植物は薬用になることも多いことから名付けられました。「スプレンデンス」は「光り輝く」や「素晴らしい」と言う意味をもっています。
そのはっきりとした由来はわかっていませんが、太陽に照らされながら咲き誇る姿はとても素晴らしく、はっきりとした赤はどこか光り輝いているようにも見えます。
赤の他にも紫やサーモンピンクの花色を咲かせるものあり、そのどちらもまた鮮やかでとても綺麗。サルビアには甘い蜜があり、子どもの頃にその蜜を吸った人もいるのではないでしょうか。
そんな甘い蜜とは対照的に「燃ゆる想い」や「エネルギー」などの情熱的な花言葉も。夏を元気に乗り切れそうパワーをくれる、情熱のお花です。
ふんわりふわふわ、アゲラタム
初夏から秋にかけて紫・ピンクのふさふさとしてふんわりとした花を咲かせるアゲラタム。
アゲラタムはギリシア語で否定をあらわす「ア」と年をとるの意味をもつ「ゲラス」の言葉からなり、「老いを知らない」「古びない」と言う意味をもちます。長期間花色が色褪せないことから由来しています。
しかしアゲラタムは寒さに弱いため日本では冬に枯れてしまい、一年草として育てられています。別名カッコウアザミと言われることもあり、アザミの花に似ているのが特徴的。
名前の由来はその名の通り葉が「カッコウ(郭公)」という鳥に似ていて花がアザミに似ているからという説。「カッコウ(郭公)」ではなく、漢方の生薬である「かっこう(霍香)」の原料になるカワミドリという植物に葉が似ていることからという説の二つがあります。
また、糸を束ねたような花の形をしていることから「糸の花」を意味する「フロスフラワー」という英名もあります。花言葉は「信頼」「幸せを得る」「安楽」。
ふわふわと風に揺れる花が幸せを運んできてくれそうなとても可愛らしいお花です。
いかがでしたでしょうか。
見たことはあるけど名前を知らなかったお花、今まであまり注目していなかったお花も多くあったのではないでしょうか。
意外な効果や効能を持った花もありましたが、あくまでも専門的な知識を持った人が扱ってこその効果なので、決して安易に試すことのないようにしてください。ただ眺めているだけでももちろん楽しめますが、その花の名前や由来、意外な物語を知るとより身近に花を感じることができるようになります。
あまり知られていない知識をほんの少し頭に置いておくだけで花の見方も変わってきます。何故この名前なのか、何故この花言葉なのか、花一輪にしてもとても奥が深いものばかり。
この夏は当たり前のように側にあるお花に少し注目してみてください。
まとめ
【夏の花図鑑】赤・ピンク・紫の夏に咲くお花、10選☆
・伝統の夏を彩る朝顔(アサガオ)
・滑らかな肌触りと美しい花、百日紅(サルスベリ)
・異国の地を思わせる亜米利加梯梧(アメリカデイゴ)
・毎日元気な日日草(ニチニチソウ)
・可愛らしいお喋りさん、金魚草(キンギョソウ)
・丈夫で美しい、松葉牡丹(マツバボタン)
・小さくても個性豊かなフウロソウ
・癒しの花、ラベンダー
・情熱の国から来たサルビア・スプレンデンス
・ふんわりふわふわ、アゲラタム