シクラメンにどんな花言葉が付けられているのか知らない人は、暗い印象の花言葉を想像するかもしれませんよね。日本ではシクラメンは「死」や「苦」を連想させるという理由でお見舞いには向かない花とされていますし、プレゼントするにも少し気を遣う花です。
このマイナスのイメージからシクラメンはなんとなく苦手という人も少なくありません。日本はマナーや常識を重んじる国ですから、マナーや常識に引っかかることを強く記憶して避けるのは仕方のないことだと言えます。
しかし、それだけで価値を決めてしまうのはもったいないこともあり、シクラメンの花のイメージはそのひとつです。死苦ラメンや死暗面なんて漢字も当てられていますが、シクラメンの名前は受粉後に茎が丸くなることや、塊茎という丸い球根のような部分があることからギリシャ語の「cycle(円・螺旋)」が由来とされています。
名前だけではなくシクラメンの花言葉も死や苦しみのイメージがないものばかりで、その由来や逸話について掘り下げて知ることで、シクラメンの「縁起の悪い花」といったイメージも覆すことができます。そこで今回はシクラメンの花言葉に隠された意味をお伝えします。
シクラメンが表す「内気」はネガティブな言葉ではない
シクラメンの花言葉の由来には有名な伝承があります。草花好きのソロモン王が自分の王冠のモチーフにしたいとありとあらゆる草花にお願いをするのですが、どの草花にも断られてしまいます。肩を落とすソロモン王にシクラメンが元気を出してと声をかけると、その優しさに感動したソロモン王がぜひ王冠のモチーフになって欲しいと頼み込みます。
ソロモン王の願いを許諾したシクラメンにソロモン王が感謝の気持ちを伝えると、シクラメンは嬉しさと恥ずかしさのあまりうつむいてしまい、顔を上げることができなくなってしまったという内容で、この伝承にはいくつかのパターンがあるのですがどれもシクラメンの花言葉である「はにかみ」や「内気」の由来になっています。
「内気」や恥ずかしがる様子を表す「はにかみ」という言葉には頼りなく自分に自信がない印象もありますが、シクラメンのエピソードからは内気さの中にもソロモン王を励ましたり、誰もが断った王冠のモチーフという内気なシクラメンにとっては身に余るような頼み事でも承諾してあげる優しさが感じられます。
外見だけではない「清純」の意味
一般的な白い花は花芯が見えているのでたとえ花びらが白くても中心部分に黄色や薄緑などの色が見えているのですが、花芯を隠すようにうつむいて咲くシクラメンの場合、真っ白と断言できるほど汚れのない白い花を見せてくれます。
白い花には「清楚」や「純粋」などの清らかなイメージにちなんだ花言葉がよく付けられているのですが、白いシクラメンには「清純」という、似たようなイメージでありながらも「清楚」や「純粋」とは少し違った印象を受ける花言葉が付けられています。
清楚と純粋と清純のどれを選んでも違和感がないのですが、シクラメンとソロモン王のエピソードを知ると清楚や純粋ではなく「清純」という少し落ち着いた印象を持った内面の清らかさを表す言葉が一番似合っているように感じます。このように、白いシクラメンの花言葉には見た目の印象だけなく、伝承から思い浮かべることができる内面の美しさが隠されていることがわかります。
炎のように見える花姿から付けられた花言葉
シクラメンの和名である「篝火花(かがりびばな)」は、日本の牧野富太郎という植物学者が命名しました。ある年の正月時分に温室を見物しに来た貴婦人が、咲き誇るシクラメンの花を見て「これはかがり火のような花ね」と言いました。
その率直な感想を興味深く感じた牧野富太郎は、当時呼ばれていた「豚の饅頭」という名前よりも断然、美しいシクラメンの花にぴったりだと思い、シクラメンの和名を篝火花にしたというエピソードが残されています。
篝火花のエピソードでもわかるように、赤色のシクラメンは燃えるような赤色や深い赤が多く、花の姿が炎のように見えるため、炎が燃えているイメージを持つ「嫉妬」の花言葉が付けられました。
赤色のシクラメンのあまり知られていない花言葉に「愛情」があります。シクラメンの葉はよく見るとハートの形をしていますし、赤は愛や情熱の色です。炎のように見える花も、近くで見ると蝶々が集まっているようにも見えます。
実はシクラメンの花びらを蝶々のようだと表現する人は多いです。蝶々は古くから喜びを表すモチーフとされていて、花言葉の「愛情」やハートの葉と合わせて見直すとシクラメンの見方が縁起の悪い花から幸せを表現している花に変わります。
憧れの中には純粋な気持ちが隠れている
可愛らしいピンクのシクラメンにはシクラメン全体の花言葉でもある「内気」や「はにかみ」の他に「憧れ」の花言葉が付けられています。シクラメンがうつむいて咲く姿は憧れの人と話す時の少し恥じらう姿にも似ています。
憧れを抱くということは相手の良い部分をたくさん見つけることができているということです。また、自分にない部分を持つ相手へ好意や尊敬する気持ちがないと素直に憧れを持つことはできません。
自分にない相手の良い部分を思う気持ちがネガティブな方面に向いてしまうと赤いシクラメンの花言葉のように「嫉妬」のような感情に変わってしまうこともあります。ピンクのシクラメンの花言葉の「憧れ」には相手の良い部分を認めて敬う素直さが秘められています。
縁起が悪いと嫌われている花に込められている本当の願いとは
シクラメンは室内でも花を咲かせてくれるので、玄関やリビングのようなよく目につき家族や来訪者との会話がある場所に置かれる花です。花数の多いシクラメンは咲いていた花が数本萎れてもすぐに次の新芽が花を咲かせるため、開花期間が終わるまでいくつもの花が咲き誇っている姿を長く楽しめます。
そのように、次から次へと花を咲かせるのは家族や友人と楽しむ会話に似ています。そのため人と人との繋がりや絆が深まるイメージや願いを込めて「絆」という花言葉が付けられています。
シクラメンは「死や苦を連想させる」「シクラメンの赤が血をイメージさせる」「鉢植えであるから寝付く(根付く)のを意味する」といった悪いイメージが多いので入院見舞いなどにはタブーである他、お祝いの場でも嫌われることの多い花です。
贈り物にするのに注意するべき花と理由はマナーとして知っておくべきこととはいえ、人との繋がりが深まるのを願う素敵な花言葉が暗いイメージで隠されているのはもったいないことです。
さて、花の名前や花言葉は、その由来を知らない人がほとんどです。特に花言葉に関しては簡潔に気持ちを伝えやすいツールである反面、誤解されやすくもあります。
シクラメンにしても花言葉やその由来を知ると死や苦しみのイメージとは離れた優しい印象の花に変わります。機会があれば周りの人にもぜひシクラメンに付けられた花言葉やソロモン王との微笑ましいエピソードを教えて下さい。
シクラメンにネガティブなイメージを持っている人もそんな花だったんだと驚き、シクラメンのことを好きになるかもしれません。シクラメンは元々持っている性質といえど寒さに強く、開花期間が終わるまでひたすら花を咲かせ続けてくれる植物です。
いくらシクラメンの花言葉や由来を知っていてもマナーを優先する必要があるので贈りものには向きませんが、今回お伝えしましたシクラメンの花言葉に隠された意味が親しい間柄の人や家族間、自宅などでシクラメンの花を楽しむきっかけになれば幸いです。
まとめ
シクラメンの花言葉に隠された意味とは
・花言葉の由来に暗いイメージを払拭する優しい伝承がある
・白いシクラメンの花言葉は内面の美しさを表している
・赤いシクラメンには嫉妬だけでなく愛情という花言葉も隠れている
・憧れの中には相手の良さを認める素直さがある
・大切な人との「絆」が深まるように願いが込められている