マリーゴールドの花言葉とギリシャ神話の7つの神話

花壇や花畑で、私たちの目を楽しませてくれる花、マリーゴールド。鮮やかなオレンジや黄色の花の色は、気持ちまでも明るくしてくれそうですね。

しかしその花言葉は「文字通り」といったものと、意外にも「人生の暗部」を表したものと、極端なものが同列に存在しています。それは、マリーゴールドの花に深く関わるギリシャ神話の太陽神・アポローンに因む様々な神話がもとになっているからです。

アポローンは、ギリシャ神話の主神で全知全能の存在であるゼウスと、大地の女神レトの間に生まれた子で、狩りの女神・アルテミスとは双子にあたります。また、もともとは別の太陽神であったヘーリオスと同一視されています。

光があれば、必ず影も存在するもの。神話の世界の視点から、花言葉を紐解いていきたいと思います。

 

マリーゴールドの花言葉と
ギリシャ神話の7つの神話

 

マリーゴールドの学名のお話

マリーゴールドは、キク科コウオウソン属のうち、草花として栽培される品種をさします。学名は「タゲテス(tagetes)」。

このタゲテスという名は、紀元前8世紀から紀元前1世紀頃にかけてイタリア半島の中部にあった国「エトルリア」に占術を伝授した神話の人物「ターゲス」にちなむものです。植物学者リンネが、この名を花に捧げました。

マリーゴールド(オレンジ色の花)がもつ花言葉のひとつに「予言」というものがありますが、この言葉はターゲスに因むものかと思われます。ただし、マリーゴールドの花言葉に密接に絡んでくる太陽神アポローンも「神託を授ける予言の神」としての側面を持っているため、こちらからの由来という考え方も出来るのです。

「何がもとになっているのだろう?」という、ピンとこないような花言葉にこそ、然るべき由来があるのですね。

 

太陽神アポローンの「様々な顔」のお話

アポローンは太陽神である他にも、様々な事物を司っています。詩や音楽などの芸術の神、病を払う医術の神、予言の神、弓術の神でもあります。また、凶暴な大蛇を退治するような、勇猛な神です。

マリーゴールドには「信頼」「勇者」「悪を挫く」という花言葉があります。また黄色の花には「健康」という花言葉もありますが、これらはまさにアポローンの持つ様々な顔に由来するものでしょう。

 

アポローンと水の妖精クリュティエーのお話~そもそもの始まり

アポローンは多情な神でもありました。そのことがもとになった神話も、マリーゴールドに結び付いたものです。

愛の女神・アフロディーテは炎と鍛冶の神・ヘーパイストスの妻でした。しかし、荒ぶる神・アーレスと道ならぬ関係に陥ってしまいます。ふたりの不義を知ったアポローンは、ヘーパイストスにその事を言いつけてしまいます。

アフロディーテはアポローンの仕打ちを許すことができませんでした。そこで、彼の寵愛を一身に受けていた水の妖精クリュティエーの「嫉妬心」を利用して復讐する策を講じたのです。

 

アポローンと水の妖精クリュティエーのお話~悲劇のマリーゴールド

アフロディーテは故意に、ペルシャ王オルカモスの娘・王女レウコトエをアポローンに近づけました。アポローンはたちまちレウコトエの美しさに魅かれ、二人は恋仲になりました。見向きもされなくなってクリュティエーは、そのことをオルカモスに言いつけます。

すると激怒した王は、レウコトエを生き埋めにし、殺してしまったのです。それを悲しんだアポローンは、レウコトエのなきがらを乳香の木に変えました。

しかし、悲劇はそれだけに収まりませんでした。クリュティエーは、自分の嫉妬心による行動でレウコトエを亡き者にしてしまった自分を恥じました。そればかりでなく、アポローンの心も取り戻すことが出来なかったのです。

絶望したクリュティエーは、9日間アポローンを見つめ続け、そのまま身体は一輪のマリーゴールドになってしまいました。マリーゴールドには「嫉妬」「悲しみ」と言った花言葉がありますが、これらはクリュティエーの姿に通じるものと考えられます。

 

アポローンに恋い焦がれた乙女カルタのお話

こちらは、また別のお話です。多くの神々や妖精に愛されたアポローンですが、人間も例外ではありませんでした。ある時、カルタという乙女も、アポローンに恋をしました。

カルタにとっては、毎日太陽=アポローンの姿を見ることが何よりの生きがいでした。しかしその思いは激しく、自らの情熱の炎に蝕まれて、彼女は徐々にやせ細って行きました。そしてとうとう、彼女の身体はひとひらの魂となって消え失せてしまいました。その魂は、一輪のマリーゴールドとなったのです。

自らの身体を蝕んでしまうほどの愛情。マリーゴールドには「濃厚な愛情」という花言葉がありますが、まさに愛情の深さで滅んでいったカルタを思わせます。

そしてオレンジ色の花が持つ花言葉は「真心」。咲く花にこの言葉を重ねてみると、花の形が美しい炎に見えてくるようですね。

 

アポローンを慕う美少年クリムノンのお話

アポローンを恋い慕ったのは女性だけではありません。美少年クリムノンもそのひとりでした。クリムノンは毎日空を仰ぎ、太陽=アポローンを目にすることで幸せを感じていました。やがてアポローンもクリムノンの恋心を知り、彼に愛情を抱くようになりました。

ところが雲の神がそのことに嫉妬し、アポローンを雲で覆い隠してしまいました。それは8日間続き、クリムノンは嘆き悲しんで倒れ、息絶えてしまいます。そのなきがらを、アポローンはマリーゴールドの花に変えました。

マリーゴールドの持つ「絶望」「悲嘆」という、その花に似つかわしくない重たい花言葉に通じるお話です。

 

太陽に向かって咲く花のお話

以上のお話は、マリーゴールドの花言葉にちなむものでしたが、実は他の太陽に向かって咲く花、ヒマワリやヘリオトロープにも共通したお話です。

また「ポットマリーゴールド」と呼ばれるキンセンカ(カレンデュラ)のお話でもあります。ところが、ヒマワリやヘリオトロープは、神話の成立した時代にはギリシャの地になかったものなのです。

しかし、どんな花であっても太陽に向かって咲く花の姿は、太陽神アポローンに恋をする姿にも見えますね。そんな様子が、神話が語り継がれる背景にもなっているのでしょう。

 

このように、あの小さな花の背景には、様々な物語があるのです。花の形や色が太陽を思い起こさせる、また花の咲く性質が太陽にちなんだ神話を生む…このことからこんなにお話が大きく広がりを見せるとは、人間の想像力には底知れぬ深さがあるものです。

花にはマリーゴールドと同じように、ギリシャ神話にまつわる花言葉を持つものが多くあります。「Do not forget me」で知られる忘れな草なども、その一例ですね。この記事をきっかけに、神話の世界もいかがでしょうか。

マリーゴールドは、特に青空の下で映える花です。この花を見掛けることがあったら、アポローンや彼にまつわるお話を思い出してください。びっくりするほど世界が広がって見えることでしょう。

 

まとめ

マリーゴールドの花言葉とギリシャ神話の7つの神話

・マリーゴールドの学名のお話
・太陽神アポローンの「様々な顔」のお話
・アポローンと水の妖精クリュティエーのお話~そもそもの始まり
・アポローンと水の妖精クリュティエーのお話~悲劇のマリーゴールド
・アポロンに恋い焦がれた乙女カルタのお話
・アポロンを慕う美少年クリムノンのお話
・太陽に向かって咲く花のお話


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