パンジーが育てやすい花として選ばれるワケ


「三色すみれ」とも呼ばれるパンジーは春の花としておなじみですよね。早春の花屋さんの店先では、パンジーのミニブーケが売られていることがよくあります。優しい色が多い春の花の中で、紫や黄色のパンジーは小さいながらも目立つ存在です。

駅前や公園などの花壇では、冬になるとパンジーがたくさん植えられます。また、ホームセンターなどでも秋口から色とりどりのパンジーの苗がずらりと並びます。春のガーデニングの準備に、また花の少なくなる冬の貴重な花として、売り場の人気を同じスミレ科のビオラといつも争っているのがパンジーです。

これほどパンジーが売られているのは、パンジーがただ単に手間のかからない丈夫な花だからではありません。そこで今回はパンジーが育てやすい花として選ばれるワケについてお伝えします

 

パンジーが育てやすい花として

選ばれるワケ

 

霜や雪にも負けず強くて丈夫

葉や茎が華奢なものが多い春の花の苗は、霜や雪が当たることで最盛期を迎える前に茎が折れたり、ひどい時は枯れてしまったりすることもあります。これは、霜や雪が植物の細胞を凍らせて壊してしまうため

パンジーは気温が5度を切ると葉が紫色に変色することがありますが、マイナス5度~10度には十分耐えられます。また、株が雪に埋まっても、低温で凍結しても損傷が少なく、活動を再開する強さを持っています。余程の大雪でない限り寒さ対策をしなくてすむ点で、パンジーの育てやすさは群を抜いています

市場では花付きのパンジー苗が売られていることが多いため、真冬でも花をたくさん咲かせ続けると誤解されがちですが、真冬の花付きは良くありません。日中の気温が上がり桜の便りが聞かれる頃には本格的に咲き始めるので、少し我慢が必要です。

 

各地にパンジーを育てている小学校がたくさん

毎年ローカルニュースで10月から2月頃にかけて「○○小学校では、パンジーの植え付けが行われました」という話題が取り上げられます。小学校でパンジーを育てる理由は授業の一環であったり、地元のマラソン大会の走路の飾りつけ用だったり、卒業式の飾りつけ用など実に様々ですが、皆が一斉に一生懸命スコップをふるう姿が印象的です。

その後は交替で水やりをして、どこの学校でも立派なパンジーを育てているのが自慢だとあります。学校は日当たりの良い場所の確保がしやすいこともありますが、日当たりと水さえあれば他にこれといった気遣いのいらない、育てやすいパンジーだからこのように生徒が植える花として選ばれるのです

 

色の見本帳が作れるほど色数が豊富

ガーデニングの計画を立てるのに、色はとても大切です。特に寄せ植えする場合は、作りたいイメージを確実に表現するのには最初の植物選びが肝心です。ほとんどの園芸植物は色に偏りがあり、赤・青・黄色のバリエーションも限られていますが、パンジーは鮮やかな色から淡い色、渋い色までほとんどの色が揃っています。

花弁の色が2色、3色といった組み合わせも入れば、無い色はないくらい色数が豊富です。中でも、パンジーが持つ青い色素「デルフィニジン」は、遺伝子操作による世界初の「青いバラ」を作るために利用されたほどで、青色・紫色のバリエーションが非常に多いのが特徴です

そこから紫色をさらに深くした、ほとんど黒色のパンジーも生まれています。そのおかげで、イベントなどで花を使うアートを作る際にはパンジーが絵の具のような感覚で使われているのです。思いのままに色のイメージ作りができるパンジーは、家庭用からプロ用まで幅広い層が育てる花として最初に選んでおくべき花だといえます。

 

どんな植物とも相性が良い

パンジーは一株の鉢植えでも十分観賞に値する花ですが、脇役として他の花と寄せ植えにすることでさらにその良さを発揮することができます。春の花壇で目立つのはチューリップ、スイセン、ムスカリなどの球根の花です。

それら秋植えの球根と一緒にパンジーを植えることで真冬も地上が寂しくならず、開花の頃には一気にガーデンが華やぎます。また球根の花は花の大きさに対して茎が長いものが多いので、草丈が低くカラフルなパンジーはその空間を埋めるのにもとても役立ちます。

パンジーは秋冬に人気のコニファーとの相性も抜群です。クリスマス前にポインセチアやシクラメンと一緒に寄せ植えで売られているゴールドクレストなどは、常緑樹で寒さに強いためその先も長く楽しむことができますが、冬の間は寒々しい雰囲気です。そこでパンジーと組み合わせると緑が引き立ち、殺風景になりがちな真冬のガーデンを明るく彩ってくれます

 

花の中心部まで見える咲き方のため花が目立つ

花によっては、上や下、横を向いて咲くために一定方向からしか花を楽しめないものがあります。上を向いて咲くチューリップは常に花の横顔ばかり見ることになります。パンジーの花は大きいもので7~8㎝ですが、花そのものは平面的で地面に対してほぼ垂直になる形で日光を浴びようとするため、花の正面が見えやすい構造になっています。

これによってパンジーは花の数がそれほど多くない時でも観賞に堪えることができます。パンジー輪ずつが人文字を作るためのボードのような役をこなせることで、大きなオブジェの側面にたくさん植えこんでアートとして見せられるようになったことも、パンジーの使い道を広げました。

 

いかがでしたでしょうか。パンジーはとても重宝な花なのですが、ビオラに比べて成長がゆっくりで、開花に時間がかかるため花が途中で途切れる時があります。ビオラの花付きがあまりに良く消費者に歓迎されたため、種苗会社が発売する新品種がビオラばかりになった時もありました。

また、人の顔を思い出させるパンジーの花を敬遠する人も少なからず存在しています。もともとパンジーの語源はフランス語の「pensee(パンセ)」で、物思いにふける人の姿に似ているところから来ているのですが、ずらりと顔が並んだように見えて怖いという心理もわからないでもありません。

様々な要望に応えるためパンジーとビオラの間でも品種改良が盛んになり、両方の長所を取り入れたハイブリッドな品種も次々と生まれています。さらに花弁が波打つことによって花に立体感が出るフリル咲きという品種が加わりました。

一輪ずつの色の出方が微妙に違い、エレガントさが加わったフリル咲きパンジーは、一株で絵になる点で人気を集めています。パンジーは確かに初心者向けの育てやすい花ですが、育てれば育てるほど奥が深い、長く愛され続けるガーデニングの永久定番なのです

まとめ

パンジーが育てやすいと人気の理由

・霜や雪で凍り付くことがあっても枯れない強さを持っている
・小学生が育てる花としても身近なほど世話が簡単
・赤・青・黄・黒までの色のバリエーションが豊富
・球根花、コニファーなどのグリーンまで他の植物との相性を問わない
・花の正面がよく見える咲き方でアート的な使用にも通用する


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