古来から、お香は人々とともに在りました。その歴史は紀元前3000年前、メソポタミア時代にまで遡ります。良い香りのする木や樹脂、そしてそれを焚いた時の香りは「神聖なもの」として捉えられたのでしょう。
世界各地での様々な信仰や儀式の場に、お香は欠かせないものとなりました。日本には飛鳥時代に仏教が伝来した時、お香も一緒に伝えられたと言われています。
今のお香は「場や心を清めるもの」という捉え方だけでなく「香りを楽しむ趣味」としての広がりを見せています。心地よい香りは何かとストレスの多い現代人にとって、あっという間に気分転換やリラックスをもたらしてくれる魔法のようなものでもあります。
そんなお香を普段の暮らしに取り入れて、毎日を「良いもの」に変えてみませんか?そこで今回は、初めてさんでも気軽にお香を活用できる方法をお伝えします。
お香を暮らしに取り入れる☆
初めてさんも楽チン活用法
各部屋に合わせたお香を焚いてみよう
まずは最もポピュラーな使い方として、好きな香りのお香をお部屋で焚いてみましょう。「焚くお香」には、主にスティック型、コーン型、コイル型の3種類がありますので、それらの特徴について説明します。
いずれも火を使うものですから、換気をし、燃えやすいものをそばに置かないように気をつけてください。不安定な場所に焚いている最中のお香を置くことも厳禁です。
○スティック型
「焚くお香」としては最も一般的なもので、雑貨店などにもよく置いてあり入手しやすいタイプです。
★ 線香のように芯がないものと、竹などの芯があるものの2種類があります。
・ ゆっくりと香りが部屋に広がっていくので、香りの印象が柔らかいです。
・ リラックスしたい時にピッタリです。
・ スティックの長さが長いほど燃焼時間も長くなります。
・ 香りが弱い時は2本同時に焚くなど工夫することもできます。
焚くときには耐熱性の小皿の上に香立を置き、スティックを挿し込んで使います。香立はデザインが豊富で、中には小皿と香立が一体化したものもあるので、インテリアとしても楽しめますよ。
○コーン型
★ 太く短い、円錐型や三角錐型に固められているお香です。
・ 耐熱性の小皿や灰皿の上に立て、そのまま火をつけて焚くきます。
・ お香に太さがある分、焚くとすぐに香り出します。
・ 狭めの空間に一気に香らせたい時に最適です。
燃えきらなかった底の部分がぺったりと付着しやすいので、お香の下に専用の香立を置くことをおススメします。
○コイル型(スパイラル型)
★ 蚊取り線香のような渦を巻いた形のお香です。
・ 燃焼時間が長いのが特徴です。
・ 広い部屋や空気の流れがある場所での使用に向いています。
お香を折ったり、火を消したい部分に金属製のクリップを留めておくことで燃焼時間を調整できます。こちらも専用の香立てか、灰を入れた香炉の中に置いて焚きます。
【お香の使い分け、使用例】
★ パウダールームやトイレなどの狭い空間にはコーン型が向いています。
★ リビングなどではスティック型やコイル型が向いています。
また、お香は燃焼中の香りよりもむしろ残り香を楽しむものです。来客の30分ほど前に玄関でお香を焚き、火を消しておくと香りでお客さまをおもてなしすることが出来ますよ。
また、キッチンで用いるなら爽やかな柑橘の香りのするお香、友達が集まった時のリビングでは甘いフルーツの香りや、やさしい花の香りのお香を使ってみるのはいかがでしょうか。ぜひ、お店のサンプルでお好みの香りを見つけてみてくださいね。
匂い袋を様々な場所に取り入れよう
「匂い袋」はご存知の方も多いかもしれませんね。実はこれもお香の一種です。袋の中には常温でも香りやすい、揮発性の高いお香が入っています。もちろん焚く必要はありません。
イメージとしては、携帯できるような布の小袋に入ったものを想像する方も多いかもしれませんが、次のようなものもあります。
○掛け香
★ 部屋の壁などに掛けて香りを楽しむ匂い袋です。
・ 様々なデザインの匂い袋に掛けひもがついているタイプのもの。
・ 小さなかごの中に匂い袋が入っているタイプのものなど。
このように、様々な形があります。掛け香タイプの匂い袋は壁や柱に掛ける他、カーテンレールに吊るしてほのかな香りを楽しんでも良いでしょう。
○防虫香
★ 防虫効果の高い香りが入っている、お香の匂い袋を特に「防虫香」と呼びます。
・ 白檀(びゃくだん)は「サンダルウッド」
・ 丁字(ちょうじ)は「クローブ」
・ 桂皮(けいひ)は「シナモン」のことです。
アロマテラピーやスパイスのことを知っている方なら、おなじみの香りかと思います。
防虫香はタンスの引き出しの中に置いたり、クローゼットの中に吊るして使うのにピッタリです。衣服にも移り香が起こるので、なるべく好みの香りを選んでくださいね。
手作りの文香で、手紙や紙小物に香りをつけてみよう
文香(ふみこう)と呼ばれるお香をご存知ですか?お香の専門店などでは、商品としても販売されていますが、手作りの場合が多いです。
【「文香(ふみこう)」とは】
★ 封書に入れて香りを先方に届ける、小さな匂い袋を指します。
【文香(ふみこう)の作り方】
① 好きな香りのお香を用意。
② 粉状にします。
③ こぼれないように、薄い紙(ティッシュペーパーでも可)に包む。
④ 外側を折り紙や小さく切った包装紙などのお気に入りの紙でくるむ。
これで出来上がりです。ちょっとしたお手紙に、オリジナルのものを作ってみてはいかがでしょうか。
この文香は、本来のように封書に使うほか、名刺入れに入れて名刺に香りを移したり、小箱にセットして中に紙小物をなどを入れて香りを移したりして楽しむことができます。
手紙や名刺から良い香りがしたら、あなたの印象もきっと香りとともに相手方に刻まれます。
いかがでしたでしょうか。このようにお香は、生活の様々な場面の中で活用することができます。
お香にはお伝えしたもの以外にも、お香をカラフルな色と形に固めた「印香(いんこう)」や、粉にした香料にはちみつなどを加えて練って固めた「練香(ねりこう)」もあります。「練香(ねりこう)」は、熱した炭や灰の上に置き、温めて香りを楽しみます、
その他にも、数種の香木を混ぜて粉にし、身体に塗って使うように加工した「塗香(ずこう)」などまで、様々なものがあります。興味が湧いたらお香の専門店に足を運んで、サンプルを試してみると良いでしょう。
あなたの好きな香りは、あなた自身の心を落ち着かせたり、元気づけたりと、様々な力になってくれます。もちろんストレスの解消にも役立ってくれますよ。ぜひお香のもたらしてくれる魔法を試してみてくださいね。
まとめ
お香の活用法から始まる、豊かで味のある暮らし
・狭い部屋と広い部屋、部屋によってお香を使い分ける
・お香は「匂い袋」にして、粋に持ち歩く
・贈り物やお手紙に、粋ははからいを届ける手作りの文香