秋の七草に関する5つの豆知識


七草には幾つか種類があり、代表的なものは春の七草と秋の七草と言えますが、1月7日に無病息災を願って七草粥などにして食べる春の七草に比べて秋の七草はあまり馴染みがないですよね。

春の七草は正月が終わると七草粥のためにパックされた七種類の植物がスーパーの入り口近くや目につく場所に並べられますが、秋の七草を食べる行事はないので秋の七草をスーパーで見かけることはまずありません。

その為、秋の七草を知る人自体少なく、その存在を知っている人でも秋の七草の名前全てを暗唱できる人は少数です。このように、春の七草に比べて知っている人の少ない秋の七草ですが、その豆知識を知ることで新しい秋の魅力を感じることができます。そこで今回は秋の七草に関する豆知識についてお伝えします。

秋の七草を知ろう

秋の七草は「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花」「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花(おみなえし)また藤袴 朝貌(あさがお)の花」という奈良時代に歌人である山上憶良が詠み、万葉集に収められている2首続きの和歌が元になっていると言われています。

この和歌で詠まれている朝顔は一般的に桔梗のことだという説が有力で、桔梗やすすきのことを指す尾花、撫子は草花に詳しくない人でも見た目が想像できる花ですが、他の花は草花に詳しくないとはっきりと想像できません。

秋の七草を言うほどですからどれほど美しいものかと期待してしまいますが、鮮やかな色や花びらが豪華な花が好まれる現代とは違い、黄色い花を咲かせる女郎花の花意外は落ち着いた紫色の花をつける見た目の控えめな花ばかり。

しかし、秋に花野と呼ばれる秋の草花がたくさん咲く野原を散策して、草花を鑑賞しながら和歌を詠むことが盛んだった頃に多くの和歌に詠まれていたことから、当時これらの草花は自生していて身近であり、尚且つ数ある草花の中でも歌にするほど魅力のある花だったことがわかります。

 

秋の七草の覚え方

春の七草と比べると馴染みのない花も多く少し覚えにくい秋の七草。秋の七草の種類を覚えるには山上憶良の和歌を暗記するのも良いですが、秋の七草の頭文字を取って「お好きな服は?(おみなえし すすき ききょう なでしこ ふじばかま くず はぎ)」と覚える方法や、少し違ったパターンで「ハスキーなお袋(はぎ すすき ききょう なでしこ おみなえし ふじばかま くず)」も知られている覚え方。

どちらにしろ花の名前を覚えなくてはいけませんが、頭文字で覚える方法はユニークですから話が盛り上がりますね。春の七草のように何度か声に出してみると簡単に覚えられますのでこの機会に覚えてみて下さい。

 

秋の七草は春の七草より古くから存在した

現代では「七草」と言えば誰もが「春の七草」を想像しますが、昔の「七草」は「秋の七草」を指すものでした。それは奈良時代に作られた和歌が元になっている秋の七草と違い、春の七草が現代に知られている七草の種類で親しまれるようになったのは奈良時代よりずっと年月を経た江戸時代であり、それまでは春の七草と特別に定められたものはなかったから。

江戸時代に広まった春の七草は庶民でも手に入れやすい食べられる植物で、今でも食卓に並ぶ野菜や舗装された道路の端でも見かける雑草とも呼べるような草ばかりですが、秋の七草は野原に自生する植物がほとんどで、草地が減った現代では見かけることの方が難しくなってしまいました。特に藤袴は準絶滅危惧種に指定されているほど数が減ってしまっています。

 

秋の七草を鑑賞したい時はどうすればよいか

撫子や朝顔、桔梗は家の花壇や鉢植えなどに植えられていることが多い花ですが、他の花は山野や草地でないとあまり目にすることができません。秋の七草を鑑賞するために山や草地に足を運ぶのは気が進まないけれど、秋の七草を一度見てみたいという人は秋になるとお寺や神社、公園や植物園などで秋の七草に関するイベントが開催されているので、お住いの地域の花ごよみや秋のイベントを調べて下さい。

参加無料のイベントも多く、開催されるイベントによっては鑑賞だけでなく散策ができたり秋の七草を収穫することができる場合もありますから、一度参加して秋の七草の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

 

秋の七草にも違うパターンがある

秋の七草で最も一般的であるのがお伝えした山上憶良の秋の七草ですが、実は秋の七草には違う組み合わせのものが幾つか存在します。一つ目は江戸時代に好事家が選んだ「新秋の七草」で、「竜胆、おしろい花、トロロアオイ 、ヒオウギ、午時花、夕顔、からす瓜」の7種類。

二つ目は昭和10年ほどに毎日新聞社の前身である東京日日新聞社が当時の著名人7人に一つずつ秋を代表する草花を選んでもらった好事家の新秋の七草とは違った「新秋の七草」で、選ばれた花は「菊池寛のコスモス、高浜虚子の赤まんま、斎藤茂吉の彼岸花、牧野富太郎の菊、与謝野晶子のおしろい花、永井荷風のシュウカイドウ、長谷川時雨のハゲイトウ」の7種類です。

東京日日新聞社による新秋の七草は現代に生きる私たちにも身近な花が選ばれていることが分かります。それぞれの秋の七草を探したり、写真を撮って見比べてみるのも時代の移り変わりを細やかながらも感じることができて面白いですよ。

 

このように秋の七草は鑑賞を目的とした草花なので、植物が特別好きな人でない限りあまり縁のないものですが、それだけ現代の日本人は自然と触れ合う機会が減ってしまったのだとも言えます。

四季があるのは日本だけではありませんが、季節や風情を一番大切にしているのは日本と言っても過言ではありません。温暖化で秋が短くなっているからこそ、秋の風情を感じることができる秋の七草の豆知識を話題にして親しい人と秋を楽しむきっかけにして下さい。

秋の七草全て揃っていなくても、身近なものをひとつ「これが秋の七草なんだ」と思って眺めるだけでも、街でよく見かける品種改良された華やかな花とは違った、秋の花ならではの趣を感じることができるはずですよ。

まとめ

秋の七草に関する豆知識とは

・秋の七草は奈良時代に山上憶良が選んだ7つの秋の花
・秋の七草は「お好きな服は?」や「ハスキーなお袋」で覚えると良い
・春の七草よりも秋の七草の方が古くに決められていた
・秋の七草を楽しむイベントが各地で開催されている
・山上憶良の以外の人が選んだ「秋の七草」が存在する


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