マジョラムは、料理に使うだけでなく精油としても使いますが、ラベンダーやローズマリーと比べるとそれほどメジャーではないハーブですよね。シソ科のマジョラムはイタリア料理でよく知られているオレガノと同じ仲間で、外見もオレガノによく似ています。
そのためオレガノをワイルド・マジョラム、マジョラムをスイート・マジョラムと呼ぶこともあります。シソ科のハーブはキリッとしたスパイシーな香りが特徴ですが、マジョラムはその中ではやや甘さが際立っていて優しい香り。
ただ、アロマテラピーの世界では「最初はマジョラムを好きではなかったけれど次第に大好きになった」という例もよく聞かれます。第一印象に反比例するように人を惹き付けるマジョラムの香りには何か秘密があるのでしょうか。そこで今回はマジョラムの効能が生活に欠かせない理由についてお伝えします。
マジョラムの効能が
生活に欠かせない5つの理由
イタリア、フランス料理に欠かせないマジョラム
地中海原沿岸が原産のマジョラムは、古代ローマ、ギリシャ時代から様々な用途で利用されていて、結婚式で冠として使われるなど幸せの象徴のハーブとして愛されてきました。シェイクスピアの「リア王」「冬物語」などにもマジョラムの名前が。
日本ではイタリア料理に使うハーブはオレガノが有名ですが、マジョラムはオレガノよりも香りがマイルドで、オムレツやキッシュなど卵料理やトマトソース、チーズを使った料理によく合いフランスなどでも多くの料理に使われています。
また葉が柔らかいマジョラムはフレッシュハーブとしての出番が多く、中でもタイムやローズマリーと一緒に刻んだマジョラムを柔らかくしたバターに混ぜたハーブバターは、ステーキやムニエルからトーストまで様々な用途に使えてとても便利。また煮込み料理などにも仕上げにマジョラムを加えると風味が増しますよ。
穏やかな眠りを誘うマジョラムのハーブティー
日々の睡眠不足が借金のように積み重なって心身に不調を与えるという「睡眠負債」。聞いただけで怖くなってしまう言葉ですが、眠るギリギリまで何かをしていることの多い生活では、よく眠れて翌朝爽快に目覚めるのはとても贅沢なこと。
眠る前のハーブティーは身体を温め眠りを誘うのに効果的ですが、中でもマジョラムのハーブティーは血行を良くして冷えを取り、ストレスから来る頭痛や心配事を穏やかに鎮める鎮静作用に優れています。また遅い時間の食事や消化の悪いものを食べた時は食後にマジョラムティーを飲むと消化を促進するため、お腹が重くて寝つきが悪くなるのを防ぐ効果も。
マジョラムティーはさっぱりした口当たりで、ややほろ苦いほうじ茶といった香ばしい感じですので、そのまま飲んでも、またミントやオレンジピールなどとブレンドしても美味しく飲むことができます。
マジョラムの芳香成分の特徴
マジョラムの精油の特徴に、テルピネン-4-オールという成分があります。この成分は副交感神経の強壮に効果があることで知られていますが、マジョラムは他の精油と比べて20~35%と含有量が多く、そのためマジョラムは気持ちを落ち着ける作用が格段に高いのです。
抗炎症作用、鎮痛作用に優れているテルピネン-4-オールは、自律神経の乱れを整え深いリラックス状態を作り出します。そのせいかマジョラムはヨーロッパではよく墓地に植えられていて、その香りが孤独や悲しみを和らげ、死者の平和を願い魂に安らぎをもたらすとされてきました。
結婚式ではマジョラムの冠を乗せて先祖のお墓に詣で、先祖の魂に祈ったという習慣があったほどです。昔の人がマジョラムの香りに魂の深い安らぎを見出したことがうかがえますが、ちゃんと科学的な根拠があったのには驚かされますね。
マジョラムの心身への働きかけ
マジョラムに含まれるテルピネン-4-オールは神経に働きかけることでストレス性の不眠や頭痛をはじめとした身体の痛みを和らげますが、α-テルピネン、γ-テルピネンといった別のテルピネンとの相乗効果で毛細血管を拡張して血流を良くします。
現代では腸の働きにとても注目が集まっていて、腸と脳がつながっているとも良く言われますが、ストレスや怒りといった感情がお腹にたまることで老廃物の排出がうまく行われなくなり、全身の不調の元になります。その意味で腸をいたわり働きを活発にするのは健康へのためにはとても大切。
腹式呼吸もその一つですが、これがなかなかできない状態になりやすいのも現代の特徴です。みぞおちやお腹を撫でた時に冷たいと感じたら、多分呼吸も浅くなっているはず。マジョラムをキャリアオイルで1%に希釈してお腹をマッサーシすることでガスが出やすくなり便秘を解消しやすくなります。
医療や介護の現場で注目のマジョラム
マジョラムの温かみのある穏やかな香りは、最近は特に医療や介護の現場で多く利用されるようになってきました。例えば、高齢者施設でよく眠れないという人のためにマジョラムを入れたお湯で足湯をしたり、終末期の患者さんの痛みを和らげるためにマジョラムをオイルで薄めてマッサージに使ったりすることでいずれも高い効果を上げています。
血行を良くする働きのあるマジョラムですから、身体を温めることで免疫力を上げ、それが様々な面で身体に良い影響を及ぼしているのですね。また、医療や介護を行う側の人のためにもマジョラムの働きが助けにも。
医療や介護に携わる人たちは常に緊張状態を強いられていて、失敗が許されない中で笑顔を絶やさず、常に相手のことを第一に考え続ける苦労は計り知れません。夜勤などの不規則な勤務で睡眠がおろそかになることも多く、そういう方たちへもマジョラムの精油は頼もしい味方です。
いかがでしたでしょうか。マジョラムの香りが苦手…という人は、自分に厳しく「こうしなければならない」という思いをいつも抱えているタイプに多いようです。失敗できない状況に直面する時に気を緩めたらいけないと、緊張状態の連続。
それがさらに進むとその自覚もなくなっていて、すぐにはリラックスできません。そういう人にはマジョラムを単体で使うのではなく、同系の香りのラベンダーや逆にオレンジスイートなどの柑橘系の精油とブレンドして使うことをおすすめします。
フローラル系や樹木系の香りとは特に相性が良いので、好きな香りにマジョラムを少し足してみて下さい。きっと心と身体のバランスが整うのを感じられるでしょう。心を温めてくれるハーブ、マジョラム。精油として、もちろん料理にも、もっと活躍させたいハーブですね。
まとめ
現代生活には欠かせないマジョラムの主な効能とは
・古代から親しまれていて、オレガノよりマイルドな香りで料理に幅広く活躍
・マジョラムティーは消化促進・鎮静作用で良い眠りを呼ぶ
・芳香成分テルピネン-4-オールが自律神経のバランスを整え深い安らぎをもたらす
・マジョラムのお腹へのオイルマッサージは便秘を解消、腸の健康につながる
・リラックスと血行促進作用が医療や介護の現場で大きく役立っている